校長室の小窓から⑮
「啐啄同時」
10 月 19 日に創立 40 周年の集いが催されました。約 400 人の同窓会の皆様が来校され、賑わいのある会となりました。誠にありがとうございました。
金光八尾創立の昭和 60 年と言えば、日航ジャンボ機墜落事故や電電公社の民営化によるNTT発足、男女雇用機会均等法成立など、大きな出来事がありました。また、バース、掛布、岡田の強力クリーンアップで阪神が優勝した年です。私事ではありますが、教員として社会人になったのもこの年でした。
ところで、教育学用語で「40 年ギャップ」という言葉をご存知でしょうか。親世代の大人は 20 年前の子ども時代を判断基準にして、子どもが社会人になる 20 年後の世界で困らないようにしてあげたいという願いで、教育することです。しかし、大学や大企業の在り方も変わってきており、40 年の間に「一流」が「一流」でなくなっているかもしれないのです。日本では「長時間労働こそ美徳」「終身雇用や年功序列」といった文化がありましたが、既に過去のものとなっています。当たり前だと信じていたことが、時代の流れとともに当たり前でなくなっていることはよくあることです。教育の難しさの一つでもあります。
教育のヒントとなる話があります。鳥のヒナは時間をかけて殻をつつき、殻を割るのですが、親鳥はヒナに合わせて外から殻をつついてやります。しかし、決してヒナより先につつくことはないそうです。それを「啐啄同時(そったくどうじ)」と言います。親が子どもより先回りして準備したり手助けしたりしても、子どもの真の学びにはつながりません。「自分でやってみよう」という気持ちこそが、伸びるエネルギーです。
ノーベル化学賞受賞の北川進京都大学特別教授は、「幸運は準備された心に宿る」と言われました。この言葉は、フランスの細菌学者ルイ=パスツールが提唱したものです。幸運はある
日突然やってくるのではなく、普段からそれを得るための努力をしてきた者だけが手にすることができるという意味です。
「いい先生、友だち、付き合い。それはある日、突然あたるものではない。いろんな経験を大切にすることで花開く」とも話されました。出会いや経験を生かすも殺すも自分次第です。
令和7年 11 月 1 日(土) 金光八尾中学校高等学校 校長 松井 祥一