校長室の小窓から⑯

「タイパ・コスパだけでは面白くない 」

11月 5 日は今年最大の月、スーパームーンでしたが、 当日は 生憎の天気で、翌日の月を眺めながら、物思いにふけっていました 。 「 嘆けとて 月やはものを 思はする かこち顔なる わが涙かな 」（西行法師） この歌 の 涙は恋人を思って流していますが、私が 大きな月を 見て考えていたことは、残念ながら恋人のことではなく、時間の過ごし方についてで した 。学校現場はルーチン的な 面 が多く、 行事に追われて、 気づけば時間だけが足早に流れていることがあります。
いかに時間を有効 に使うのか、とても大切な課題です。 最近、「タイパ」という言葉をよく耳にします。 「タイムパフォーマンス（時間対効果）」 のことですが、Ｚ世代を中心に「タイパが良い」「タイパが悪い」と言って、短時間で大きな成果や満足度を求めているようです。動画の倍速再生やショート動画がその例と言えるでしょう。もちろん限られた時間で、タイパを優先することが悪いわけではありません。しかし、無駄に思える時間の大切さも忘れてはならないと思います。 学生時代、私は色々なアルバイトを経験しました。 40 年以上前の話です。家庭教師、塾講師、古墳の石室調査、教材の訪問販売など、当時にしてみれば時給の高いバイトでした。 唯一、 年末 の餅屋で のアルバイト は違っていました 。決して時給が良いとは言えません でしたが 、つきたての餅を ご馳走になりながら店主と雑談したり、配達先のお婆さん に お 小遣い だと 言って100 円玉 をもらったり、タイパやコスパ（コストパフォーマンス）とは真逆のゆったりとした時間が、 楽しく 人との関わりを学べる良い機会でした。
「楽しく学ぶためには勇気と 成長を実感すること」という話を聞いたことがあります。できなかったことができるようになる 自分の 成長を実感できれば、学びが楽しくなるというのは想像 に難くありません 。 では、 できなかったことができるようになるためには、どうすればよいのでしょうか。それには 新たな第一歩を踏み出す勇気が必要だということです。「自分にできるはずがない」と最初からあきらめていては何も 変わりません。
成功するか失敗するかはやってみないとわかりません。 楽しく学ぶための勇気とはそういう 気がします 。 「 為せばなる、為さねば成らぬ何事も 」 と言うではありませんか。

令和７年 1 1 月 15 日  金光八尾中学校高等学校  校長 松井 祥一