校長室の小窓から㉓
『進め! 自分。』
季節を表す好きな言葉の一つに『啓蟄(けいちつ)』があります。冬ごもりしていた虫や生き物たちがはい出る頃という意味で、春の季語です。今年は3月5日から 19 日です。子どもの頃は学校が終わると近所の田んぼで土まみれになりながら友だちと走り回ったものです。冬眠から覚めたばかりのカエル、蕾が膨らみ始めるレンゲ、そして土の香り。人は季節の移ろいを感じながら、心豊かに成長するものです。
ネットの平均利用時間が1日あたり小学生で3時間 54 分、中学生で5時間 24 分、高校生で6時間 44 分という記事を読みました。小・中・高校生全体で5時間半となり、過去最長だそうです。こんなことで四季折々を感じる時間があるのか、予習復習をする家庭学習の時間があるのか心配になります。
iPS 細胞の作製に成功した山中伸弥先生をはじめ、多く科学者たちは独創的・創造的な研究には好奇心を高めて継続することが大切だと口を揃えて訴えています。このことは科学だけではありません。例えば昔の人々の生活、つながり、欲望、偶然などをおもんばかり、その出来事が現代にどう影響を与えているか、壮大なドラマを創り上げることが本来の歴史学習だと思うのです。そうすればこれまで定説だとされていた史実が大きく覆ることもあるのです。相沢忠洋(あいざわただひろ)を知っていますよね。「日本には縄文以前の旧石器文化がなかった」とされていましたが、1946 年、相沢は関東ローム層から打製石器を発見しました。これが旧石器文化の岩宿遺跡です。2万年前の旧石器人の末裔である私たちは何者だろうか、と思いをはせると楽しくなりませんか。私自身、考古学研究会で古墳の石室調査をしていた頃の自分が懐かしく思えます。「好きこそ物の上手なれ」とは、好きなことに対して熱心に取り組み、上達するという意味です。しかし、「下手の横好き」でも構わないと思います。夢中になれることがあるというのは、とても幸せなことです。
義務教育を終える中学3年生の諸君、失敗を恐れず、自分の進みたい道を自分の足で歩んでいきましょう。もし、道が見つからなければ切り拓けば良いのです。君たちには無限の可能性が広がっているのですから。
私たちは君たちを応援します。『進め! 自分。』
令和 8 年 3 月 10 日(火) 金光八尾中学校高等学校 校長 松井 祥一